2023年1月号
新しい一年の始まりです。今年はうさぎ年、ぴょんぴょんと軽やかに元気良くいきたいものです。夜空に輝く星座にも「うさぎ座」があります。一番明るい星でも3等星と、あまり目立ちませんが、古くからある星座の一つです。冬の星座の王様、オリオン座の足元をよく見ると、長い耳を持ったうさぎが小さくうずくまった姿をイメージすることができます。お隣のおおいぬ座につかまるまいと、ひっそり息をひそめているのかもしれません。
2022年12月号
12月1日に地球との最接近を迎えた火星が夜空に目立ちます。火星が赤く見えるのは、火のように燃えているからではなく、表面を覆う岩や砂に「酸化鉄」が多く含まれるからです。太陽に照らされ「赤さび」色に輝いているわけです。周りに見える、おうし座のアルデバランやオリオン座のベテルギウスとは違った赤さです。夜は寒いので、鉄粉を酸化させて熱を作るカイロで温まりながら、火星の赤さをじっくり楽しんではいかがでしょう。
2022年11月号
11月8日の夜、皆既月食が起こります。今回はさらに、月食中の月が天王星を隠す「天王星食」も起こります。天王星は、太陽系で3番目に大きな惑星で、直径は地球の約4倍ですが、地球から遠く離れているため、観察には望遠鏡などが必要なほどです。一方、月の直径は地球の約4分の1ですが、距離が近いため、惑星よりずっと大きく見えます。地球の影に隠れる月や、月の向こうの天王星を想像すると、夜空に奥行きを感じる気がします。
2022年10月号
秋の星座には明るい星が少なく、1等星といえば「みなみのうお座」のフォーマルハウトただ一つです。南の空低い位置にぽつんと輝く姿は、「秋の一つ星」と呼ばれます。いつもはどこか寂し気に見えるフォーマルハウトも、今年は木星や土星のおかげで、「一つ星」という印象ではありません。まるで、明るい惑星の輝きを借りて、まだまだ高いところで目立つ「夏の大三角」に負けじと、特別な「秋の大三角」を作っているようです。
2022年9月号
9月10日は「中秋の名月」。夜空には満月と、見頃を迎えた「夜半の明星」木星の姿もあります。地球には月が一つですが、太陽系最大の惑星である木星には70個以上もの衛星があります。中でも、ガリレオ衛星と呼ばれる大きな四つの衛星は、木星と並んだ姿を小型の天体望遠鏡でも確認できます。目まぐるしく木星を巡る木星の「月」たちは、時間とともにその並びを変えていきます。この秋は一味違った「月」見を楽しんではいかがでしょう。
2022年8月号
暑い日が続いています。世界には最高気温が50℃を超える地域もありますが、地球の外には、さらに過酷な環境があります。太陽系の一番内側を回る水星は、地球の10倍以上の日光を浴び、昼間の表面温度は約430℃になります。地球の一つ内側を回る金星は、分厚い二酸化炭素の大気が強い温室効果をもたらし、常に表面温度約460℃の灼熱地獄です。それに比べると、地球は過ごしやすい環境です。とは言え、水分補給を忘れずに、無理せずこの夏を乗り切りましょう。
2022年7月号
七夕の織姫星として知られる、こと座の1等星ベガは、直径が太陽の倍以上ある星です。太陽が約25日で1回転自転をするのに対して、ベガは約12.5時間で1回転と、遠心力で星自身が壊れてしまいそうな程の猛スピードで自転します。彦星のアルタイルも太陽より大きな星ですが、自転の速度が速く、9時間程で1回転します。天の川を挟んで離ればなれになった二人ですが、それぞれ目が回るほど忙しく働く、似た者夫婦なのかもしれません。
2022年6月号
6月6日は「家族団らんの日」、あるテレビ番組がきっかけで作られた記念日だそうです。近頃、夜明け前の空は、地球とともに太陽を巡る惑星たちの輝きでにぎわっています。今月中旬から下旬にかけて、地球以外の七つ全ての惑星が地平線の上に勢ぞろいします。中でも水星、金星、火星、木星、土星は肉眼でも見つけることができ、古くから知られています。早起きをして、太陽系の家族団らんの様子を楽しんでみてはいかがでしょう。
2022年5月号
「五月蠅い」と書いて、何と読むでしょう?正解は「うるさい」です。旧暦の五月は梅雨にあたり、じめじめした季節に群がって飛び回る蠅(ハエ)の様子を表した当て字です。意外なことに、88星座の中で唯一の昆虫の星座は「はえ座」です。有名な南十字星のそばにあり、残念ながら日本では見ることができません。南半球の星座を作ったのは、大航海時代の観測者たちですが、彼らもうるさいハエには悩まされたのかもしれません。
2022年4月号
4月1日はエイプリルフールですが、春の夜空には嘘をついて大変な目にあった鳥の星座があります。低い位置で目につく小さな四辺形の並びの「からす座」です。神話では、カラスは元々、銀色の翼で人間の言葉を話す神の使いでしたが、噓をついた罰で、言葉を取り上げられ、真っ黒に染められて夜空に磔(はりつけ)にされてしまいました。カラスの姿は闇夜に紛れて見えませんが、カラスを打ち付けた四つの釘が今も夜空で光っているそうです。
2022年3月号
3月は英語で「マーチ(March)」、ローマ神話に登場する軍神マルス(Mars)の月を表す言葉が由来です。マルスの名は、太陽系の惑星の一つである火星の英語名「マーズ(Mars)」にもなっています。近頃、夜明け前の東の空では、金星の美しい輝きが目立ちます。その近くで控えめに輝く赤い星が火星です。今年12月の地球との接近に向け、次第に明るくなる火星も、今はこっそり金星(ヴィーナス)とのデートを楽しんでいるのかもしれません。
2022年2月号
2月3日は節分、「鬼は外、福は内」と各地で豆まきが行われます。「鬼」の頭には角がありますが、夜空にも、おひつじ座やおうし座、きりん座など、様々な角を持つ動物の星座が隠れています。中でも、額に1本の立派な角を持つのが「いっかくじゅう座」です。その角はあらゆる病気を治し、幸運をもたらすと信じられていました。「冬の大三角」の中に隠れた星座ですので、明るく輝く星々の間にその姿を想像してみてください。
2022年1月号
セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロと言えば、一年の無病息災を願って1月7日に七草粥にして食べる「春の七草」です。では、ベテルギウス・リゲル・シリウス・プロキオン・ポルックス・カペラ・アルデバランと言えば何でしょう。赤や青、黄色と色とりどりに輝く、冬の七つの1等星です。大きなダイヤモンドの形に並ぶ星々のように、今年が輝く一年になることを祈りながら、夜空を見上げてみてください。